阪神電気鉄道にてDifyを用いた生成AI研修を実施。社員一人ひとりがAI活用を身近な存在へ。
2025年7〜8月。阪神電気鉄道会社様にて、各部署の社員の皆さんを対象とし「生成AIアプリデジタルプロトタイピング作成研修」を実施しました。同企業での実施は2クラス目となります。
「ChatGPTなど生成AIを使ったことがない。」「ITは慣れていなくて、苦手。」と感じていた社員の皆さんが、わずか3日間で自ら業務改善アプリを企画・開発・発信するまでに成長された研修の様子をレポートします。
Difyを使ってAIアプリケーションを開発
研修では主に「Dify」というノーコード・ローコードでAIアプリケーションを開発できるツールを体験していきました。
初日は講師と共に手を動かしながら作っていくハンズオン形式で行い、2日目には自分で挑戦したい技術を選択して進めていきました。
ハンズオンでは、特定の知識に強いAIシステムを作り、AIの回答精度を高めるRAGという手法を構築したチャットボットや外部のAPIやサービスと連携する仕組みを作っていきました。
受講者それぞれの成長ストーリー
Aさん:「苦手」から「楽しめる」へ
初日は、はじめてのこともあり「授業についていけない」「何をしている状況なのか分からない」と、今後進めていく上で不安を感じていたAさん。
しかし同じ参加している仲間に聞いたり、自分で復習をするなど回を重ねるごとに「理解できる瞬間」を体験し、小さな自信が積み重なっていきました。 この成功体験により「やってみたい」という前向きな気持ちへと変化し、最終日には「最初は訳が分からなかったが、最後は何となく分かって楽しむことができた。」という声もいただきました。
最終発表会ではRAGを構築した社内のナレッジQ&Aチャットボットを作成するまでになりました。 3日間という身近な期間でも、「苦手」から「楽しめる」へ、確かな成長の物語が生まれています。
Bさん:自分の手で作ったものが動く達成感から自信へ
ChatGPTなどの生成AIを触ったことがないという背景を持っていましたが、初回で「自分の手で作ったものが動く達成感を感じた。」と作る感覚を掴んでいたBさん。
回を重ねるごとにAIの特性に興味・関心を広げながら、具体的に技術の応用を考え自走力をつけていました。
最終発表では、WordファイルをPowerPoint形式に変換してレポートとして自動生成するアプリを作成し、「オリジナルのアプリを作成できたことが自信につながった。」という声をいただきました。
実装していく中で気づいた「一歩立ち止まる」という内省的な学びから、今後の応用として理解を深めていくBさんの成長の変化がありました。
現場で働く皆さんだから生まれる成果物がここに
研修の集大成として、それぞれ業務の困りごとの改善を目指したアプリ開発をし、最終日に発表会を実施しました。
阪神電気鉄道会社の現場で務める皆さんだから生まれた困りごとで、大変素晴らしい成果物を全てご紹介していきます。
最終制作物のご紹介
- 視察先の自動提案アプリ
- 出張先の近くの視察先を毎回自分で調べるのが大変だという困りごとから生まれたアプリです。 Web検索機能と生成AIの力で自動で視察先候補を提案してくれるため、効率的に探すことができます。
- プロ野球優勝日予測ボット
- 某プロ野球チーム優勝記念品の発注管理作業での困りごとから生まれたチャットボットです。 生成AIが、現状と残りの試合数を調べて優勝日を予想するため、発注の対応を早めに判断することができます。
- 稟議書の作成アシストアプリ
- 稟議書を作成する際の、誤字脱字や間違いなどないか確認したいという困りごとから生まれたアプリです。 過去の稟議書を参考に現在作成している稟議書を共に比較する仕組みを作ることで、迅速に修正する箇所を生成AIが教えてくれます。
- SNSの運用状況自動集計と改善提案ボット
- YouTubeの運用状況や集計を都度確認することが手間だという困りごとから生まれたチャットボットです。 生成AIが自動集計ではなく今後のYouTubeの運営改善を提案してくれます。
- 過去の故障報告書の原因・処置改善提案ボット
- 過去の故障事案のデータを扱う上でサポートがうまくできていないという困りごとから生まれたチャットボットです。 故障報告書のPDFデータを読み込ませてRAGを構築し、状況から原因と処置方法を教えてもらえるQ&Aの仕組みです。
- 上長への説明をサポートする要点まとめチャットボット
- 新たな業務に取り組むたびに上長への要点をまとめる作業を簡略化したいという困りごとから生まれたチャットボットです。 WordファイルをPowerPoint形式に変換してレポートとして自動生成する仕組みです。
- 最終電車の運行時刻を確認できるQ&Aチャットボット
- 夜間作業前に毎回最終電車の時刻確認の手間があるという困りごとから生まれたチャットボットです。 運行表のPDFデータを読み込ませてRAGを構築し、駅ごとの最終時刻を教えてもらえるQ&Aの仕組みです。
- 議事録作成後のセルフ確認サポートアプリ
- 議事録作成後の確認や校正に時間が掛かっているという困りごとから生まれたアプリです。 細かい表現を修正しファイルまでダウンロードできるアプリになっていて、且つ自分1人でも手元で確認できます。
担任からのコメント
今回の研修で1番大切にしたのは、「正解を教わること」ではなく「手を動かしながら自分で答えを見つけること」です。
座学で知識を詰め込むのではなく、とにかくアウトプットを重視しました。
今回で2期目になりますが、世の中の技術の進歩が早くDifyのバージョン更新もあり、前の期からできることがさらに増えたため、新教材を導入しました。
Difyの既存の機能だけでなくプラグインも取り扱い、より技術の幅を広げられるような研修内容となっています。
ー 今回新しく導入した教材内容 ー
- PDFファイルからテキストを抽出し、PowerPointやExcelのデータ形式にレポートまとめの自動作成
- プラグインのMarkdownエクスポーターの機能(ver. 1.2.0)を使いました!
- Webサイトの必要な情報を抽出してSlackやTeamsへの通知
- プラグインのFirecrawlの機能(ver. 0.0.3)を使いました!
- Dify既存のノードを使って、文字起こしをした会議のメモを議事録として作成
実際に生成AIやノーコードツールに触れながら、アイデアをカタチにする過程を楽しんでもらうことで、次への学びの意欲・継続してつくることに繋がると考えています。
研修後も引き続き自分の業務や私生活に本研修の学びを活かしていってもらいたいと感じます。受講生1人ひとりの成長に驚くとともに、無限の可能性を垣間見ることができた3日間でした。
ご参加いただいたみなさまありがとうございました。